令和9年、医療のデジタル化が加速する。
標準型電子カルテ導入で見えてきた「現場ファースト」な未来予想図
標準型電子カルテ、標準仕様準拠型電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、ガバメントクラウド。制度の言葉が並ぶ中で、医療現場は何を準備すべきなのでしょうか。
電子カルテは、入力する道具から「医療情報をつなぐ基盤」へ。
令和9年以降、医療機関の電子カルテ選定は、操作性だけでなく、標準仕様・認証・クラウド・情報共有への対応が重要になります。
医療従事者の皆様にとって、「電子カルテ」という言葉は、必ずしも期待だけで迎えられるものではないかもしれません。
導入に伴う操作習得の手間、診察中に画面と向き合う時間の増加、そして決して安くない導入・維持コスト。「今のままでも診療は回っているのに」という戸惑いや不安は、現場の切実な声です。
しかし、日本の医療デジタル化は今、これまでの延長線上ではない転換点を迎えようとしています。標準型電子カルテの導入、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、認証制度、クラウド化は、医療インフラそのものを再構築する大きな流れです。
1. イントロダクション:デジタル化の波と現場の戸惑い
医療DXという言葉は、ここ数年で急速に医療現場へ浸透しました。オンライン資格確認、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、診療報酬改定DX、サイバーセキュリティ対策など、医療機関が対応すべきテーマは年々増えています。
一方で、現場からは「制度対応が多すぎて、何から始めればよいのか分からない」「電子カルテを入れ替える余裕がない」「新しいシステムを入れても、職員が使いこなせるか不安」という声もあります。
だからこそ、これからの電子カルテ選びで重要なのは、単に高機能な製品を選ぶことではありません。現場の負担を減らし、制度対応に無理なくつながり、患者情報を安全に活用できる仕組みを選ぶことです。
2. 2030年、日本の医療機関から「紙中心」の運用は消えていくのか
政府は、2030年までに概ねすべての医療機関で、必要な患者情報を共有するための電子カルテ導入を目指す方針を示しています。
遅くとも、令和12(2030)年までに概ねすべての医療機関に、必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す。
この目標は、単なる「紙カルテをなくす」ためのものではありません。重要なのは、患者の医療情報を医療機関同士で適切に共有し、切れ目のない医療提供につなげることです。
そのために、標準型電子カルテや標準仕様準拠型電子カルテ、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、オンライン資格確認などが一体的に整備されようとしています。
365メディカルの視点:
今後の電子カルテ更新は、単なるシステム入れ替えではなく、医療機関の情報管理体制を再設計するタイミングになります。契約更新時期、レセコン連携、セキュリティ、院内業務フロー、WEB掲示・施設基準管理まで含めて整理することが重要です。
3. 標準型電子カルテは、キーボードが苦手な医師の味方になるのか
標準型電子カルテの特徴として注目されるのは、従来の多機能・複雑なシステムとは異なり、現場での使いやすさを重視している点です。
デジタル庁は、標準型電子カルテ導入版の設計・開発にあたり、医療機関の利用者が処方、検査、診療情報提供書の発行などの業務をスムーズに行える機能やUXを目指すこと、レセコンや外注検査などの連携システムと業務・システム面を考慮して連携できることを挙げています。
導入ハードルの低減
紙に近い感覚で記録できる設計であれば、キーボード入力に苦手意識がある医師でも移行しやすくなります。
診療科ごとの制約を抑える
診療科特有の記載方法がある場合でも、システム側の制約が少なければ、柔軟な運用が可能になります。
コスト最適化
必要な機能に絞ることで、導入・維持費を抑えた選択肢になる可能性があります。
ただし、機能を絞ることにはトレードオフもあります。検査部門、薬局、画像管理、予約、会計、部門システムなどとの高度な連携を求める場合は、別途サービスや追加契約が必要になる可能性があります。
つまり、「標準型電子カルテで十分か」「民間の標準仕様準拠型電子カルテが必要か」は、自院の診療内容、患者数、連携先、既存システム、今後の成長方針によって判断すべきです。
4. 電子カルテ選びの新基準は「厚労省の認証」へ
今後の電子カルテ選定では、操作性や価格だけでなく、標準仕様への準拠、認証制度への対応、電子カルテ情報共有サービス・電子処方箋との接続が重要になります。
特に、令和8年度診療報酬改定で新設された「電子的診療情報連携体制整備加算」では、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスとの接続、認証された電子カルテ製品の利用などが重要な論点になります。
| 対象 | 想定される選択肢 | 確認すべきポイント |
|---|---|---|
| 医科診療所・クリニック | 標準型電子カルテ、または標準仕様に準拠した民間電子カルテ | 標準仕様対応、電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス、レセコン連携、運用負担 |
| 中小病院 | 民間企業が開発する標準仕様準拠型・認証電子カルテ | 部門システム連携、クラウド対応、データ移行、セキュリティ、更新費用 |
| 既存電子カルテ利用医療機関 | 現行ベンダーの標準仕様対応版、またはリプレイス | 契約更新時期、追加費用、データ移行、認証取得予定、加算要件への対応 |
ここで重要なのは、「標準型電子カルテ」と「標準仕様に準拠した電子カルテ」を混同しないことです。
診療所向けにはデジタル庁が関与する標準型電子カルテ導入版の整備が進められています。一方、中小病院では、民間ベンダーが開発する標準仕様準拠型の電子カルテ・レセコンを選定することが中心になります。
5. 信頼の基盤は、ガバメントクラウドとセキュリティ対応へ
標準型電子カルテや標準仕様準拠型電子カルテでは、クラウド技術の活用が重要な前提になります。
厚生労働省の標準仕様では、医科診療所向けに、電子カルテ情報共有サービス及び電子処方箋への対応、ガバメントクラウド対応が可能となるSaaS型クラウドサービス、標準API、データ引き継ぎが可能な互換性の確保などが要件の方向性として示されています。
これまで院内サーバーで運用してきた医療機関にとって、クラウド化は不安もあるかもしれません。しかし、クラウド化は単に「サーバーを院外に置く」ことではありません。二要素認証、アクセス権限、ログ管理、バックアップ、障害時対応、サイバー攻撃時のBCPまで含めた運用設計が必要です。
注意点:
「クラウド対応」と「安全に運用できる」は同じ意味ではありません。医療機関側でも、ID管理、権限管理、職員教育、緊急時の連絡体制、バックアップ確認、サイバーセキュリティ規程の整備が必要です。
6. クリニック・中小病院が今から準備すべきこと
令和9年4月に向けた動きは、すぐにすべての医療機関が電子カルテを入れ替えなければならない、という意味ではありません。
しかし、次回の電子カルテ・レセコン更新時に、標準仕様や認証、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋への対応が判断基準になることは間違いありません。
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現在の電子カルテ・レセコンの契約更新時期を確認する
リース期間、保守契約、更新予定日を整理し、次回更新を医療DX対応の節目として考えます。 -
現行ベンダーの標準仕様・認証対応予定を確認する
対応予定の有無だけでなく、時期、費用、対象機能、電子カルテ情報共有サービスとの接続範囲を確認します。 -
電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの対応状況を確認する
導入済みか、未導入か、運用開始登録が必要か、院内フローが整備されているかを確認します。 -
クラウド化に向けたセキュリティ体制を整備する
二要素認証、アクセス権限、ログ管理、バックアップ、サイバー攻撃時のBCPを確認します。 -
施設基準・WEB掲示・証憑管理と連動させる
電子カルテだけでなく、届出情報、院内掲示、WEB掲示、加算要件、証跡管理を一体で管理することが重要です。
標準型電子カルテは「義務」ではなく、現場を見直すチャンス
標準型電子カルテの登場は、単なるツールの変更ではありません。情報の分断を解消し、日本の医療の質を底上げするためのインフラ再構築です。
機能を絞り、紙のような操作感を目指す設計は、テクノロジーを使いこなすこと自体を目的にするのではなく、医療の本分である「診察」に集中できる環境を取り戻すためのものです。
- 2026年 認証制度・標準仕様・加算要件・ベンダー対応状況の確認が重要に。
- 2027年4月 標準型電子カルテ・標準仕様準拠型電子カルテのリリースに向けた動きが本格化。
- 2030年 概ねすべての医療機関で、必要な患者情報を共有する電子カルテ導入を目指す流れへ。
標準型電子カルテ時代の準備は、システム選定だけでは終わりません
365メディカルでは、医療DX、施設基準、WEB掲示、電子的診療情報連携体制整備加算、証憑管理、業務フロー設計の観点から、医療機関が標準型電子カルテ時代に備える体制づくりを支援しています。
365メディカルに相談する引用・参照
免責事項
本記事は、2026年6月28日時点で公表されている厚生労働省、デジタル庁、参照記事等の情報をもとに、365メディカルが医療機関向けにわかりやすく整理したものです。制度内容、診療報酬、施設基準、認証制度、補助金、導入要件、スケジュール等は今後変更される可能性があります。実際の導入判断、届出、契約、システム選定にあたっては、最新の公的資料、所管機関、電子カルテベンダー、専門家等に必ずご確認ください。