医療DXの流れが、いよいよ「制度の話」から「現場のシステム選定」の段階へ移り始めています。 その中心にあるのが、標準型電子カルテです。
2026年3月31日、厚生労働省は「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」のページを開設し、 中小病院向けおよび医科診療所向けの標準仕様書1.0版を公表しました。
これにより、電子カルテの標準化は、これまでの「検討段階」から、実際の製品開発・導入検討・次回更改を見据えた段階へ進んだといえます。
標準型電子カルテの位置づけ
標準型電子カルテは、厚生労働省が進める医療DXの中核に位置づけられています。 背景には、全国医療情報プラットフォームの整備、電子カルテ情報の標準化、電子処方箋の普及、 診療報酬改定DXなど、複数の政策が同時に進んでいることがあります。
全国医療情報プラットフォーム
医療機関、薬局、患者本人が必要な医療情報を共有しやすくする基盤整備です。
電子カルテ情報の標準化
ベンダーごとに閉じた電子カルテから、標準仕様に基づく連携型の仕組みへ移行します。
電子処方箋との連携
処方情報を電子的に扱い、薬局や他医療機関との連携を進める流れが強まります。
従来の電子カルテ選定では、「画面が使いやすい」「診療科に合っている」「レセコンと連携できる」といった視点が中心でした。 しかし今後は、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、標準API、データ移行性、クラウドセキュリティまで含めて判断する必要があります。
標準型電子カルテは、単なる「新しい電子カルテ」ではありません。 院内業務、外部連携、データ共有、将来のシステム更改を見据えた医療DX基盤です。
2026年4月時点で押さえるべき最新動向
2026年4月時点で、医療機関が押さえるべき最も重要な動きは、 厚生労働省が中小病院向け・医科診療所向けの標準仕様書1.0版を公開したことです。
これにより、今後の電子カルテ選定やレセコン更改は、単なるベンダー比較ではなく、 標準仕様への対応状況を確認しながら進める必要が出てきます。
今すぐすべての医療機関が標準型電子カルテへ移行しなければならない、という話ではありません。 しかし、次回の電子カルテ更改、レセコン更新、クラウド移行、開業時のシステム選定では、 標準型電子カルテの要件を無視できない状況になっています。
標準型電子カルテで何が変わるのか
標準型電子カルテによって大きく変わるのは、電子カルテが「院内完結型」から「連携前提型」へ移行していくことです。
これまでの電子カルテは、ベンダーごとに仕様が異なり、他システムとの連携やデータ移行に大きなコストがかかるケースが少なくありませんでした。 今後は、標準APIやHL7 FHIRなどの標準規格を前提に、電子カルテ情報を医療機関間で共有しやすくする方向へ進みます。
| 情報連携の対象 | 想定される内容 | 医療機関への影響 |
|---|---|---|
| 診療情報提供書 | 医療機関間で紹介状を電子的に共有 | 紹介・逆紹介の業務効率化につながる可能性 |
| 退院時サマリー | 診療情報提供書に添付する形で活用 | 病院・診療所・在宅医療の連携を支援 |
| 健康診断結果 | 医療保険者、医療機関、本人等が閲覧 | 健診後フォローや生活習慣病管理に活用しやすい |
| 臨床情報 | 患者の診療情報を必要に応じて共有 | 重複検査の抑制や診療継続性の向上が期待される |
| 患者サマリー | 本人等が自ら確認できる情報基盤 | 患者参加型医療や説明責任の強化につながる |
電子カルテが標準化されることで、紹介、転院、在宅医療、検査結果共有、薬局連携などの運用が変わる可能性があります。
電子処方箋との連携も重要になる
標準型電子カルテを考えるうえで、電子処方箋との連携も重要です。 今後の医療DXでは、電子カルテ、レセコン、電子処方箋、オンライン資格確認、電子カルテ情報共有サービスが別々に存在するのではなく、 相互に接続されることが前提になります。
電子処方箋対応で確認したいこと
- いつ電子処方箋に対応するのか
- どの機能まで対応するのか
- 追加費用が発生するのか
- 既存運用にどの程度影響するのか
- スタッフ教育やマニュアル整備が必要か
- トラブル時のサポート体制はどうなるのか
電子カルテの選定は、機能表だけでは判断できません。 現場の診療フロー、受付、会計、処方、レセプト請求、患者対応まで含めて、実際に運用できるかを確認する必要があります。
クラウド型電子カルテへの移行が進む
標準型電子カルテの議論では、クラウド型運用も大きなテーマです。 従来のオンプレミス型電子カルテから、クラウド型電子カルテやSaaS型サービスへの移行が進む可能性があります。
| 項目 | クラウド型電子カルテのメリット | 確認すべき注意点 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 院内サーバー購入費を抑えやすい | 月額費用やオプション費用を確認 |
| 保守管理 | サーバー管理や更新作業の負担を軽減 | 障害時の対応体制を確認 |
| 制度改定対応 | 法改正や仕様変更への対応が進めやすい | 追加費用の有無を確認 |
| バックアップ | 災害時・障害時の復旧設計がしやすい | 復旧時間やデータ保全方法を確認 |
| 外部連携 | 予約、問診、会計、患者連絡と連携しやすい | 標準APIや連携実績を確認 |
一方で、クラウド型であれば何でもよいわけではありません。 医療情報を扱う以上、セキュリティ、権限管理、ログ管理、バックアップ、障害時対応、データ移行、 契約終了時のデータ返却などを慎重に確認する必要があります。
医療機関に求められる3つの対応
現在の電子カルテの将来対応を確認する
標準仕様、電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、標準APIへの対応予定を確認します。
未導入・開業予定なら選定基準を変える
使いやすさだけでなく、連携性、クラウド対応、データ移行性を重視します。
業務フローを先に整理する
受付、診療、会計、請求、患者連絡まで含めた業務設計が重要です。
1. 現在の電子カルテの将来対応を確認する
すでに電子カルテを導入している医療機関では、現在利用している電子カルテが、 今後どのように標準仕様へ対応するのかを確認する必要があります。
確認すべきポイント
- 電子カルテ情報共有サービスに対応予定があるか
- 電子処方箋との接続に対応しているか
- HL7 FHIRなど標準APIへの対応方針があるか
- クラウド移行の選択肢があるか
- データ移行・データ出力の仕様が明確か
- 次回更改時のロードマップが示されているか
2. 未導入・開業予定の医療機関は選定基準を変える
これから電子カルテを導入する医療機関や、新規開業を予定しているクリニックでは、 電子カルテ選定の基準を見直す必要があります。
| 従来の選定基準 | これから追加すべき選定基準 |
|---|---|
| 画面が使いやすいか | 電子カルテ情報共有サービスに対応できるか |
| 診療科に合っているか | 電子処方箋に対応できるか |
| レセコンと連携できるか | 標準APIに対応しているか |
| 月額費用が妥当か | データを将来移行しやすいか |
| サポートが受けられるか | クラウドセキュリティの説明が明確か |
3. 業務フローを先に整理する
F Labelとして特に重要だと考えるのは、電子カルテ導入前に業務フローを整理することです。 電子カルテは便利な道具ですが、現場の運用が整理されていない状態で導入すると、かえって負担が増えることがあります。
業務フロー未整理で起こりやすい問題
- 受付スタッフの入力作業が増える
- 医師の記録時間が長くなる
- 会計処理が複雑になる
- レセプトチェックが属人化する
- 患者への説明が不十分になる
- 外部システムとの連携がうまくいかない
- 導入後に追加開発や設定変更が増える
F Labelが考える標準型電子カルテ対応のポイント
F Labelでは、医療機関のシステム導入や業務設計において、単にツールを導入するのではなく、 現場運用に合わせた全体設計を重視しています。
電子カルテ単体ではなく、診療インフラとして考える
電子カルテは、患者情報、紹介情報、処方情報、検査情報、会計情報、レセプト情報が集まる中核システムになります。
ベンダー任せにしすぎない
医療機関側でも、最低限確認すべき要件を整理し、比較できる状態にしておくことが重要です。
データ移行性を必ず確認する
将来の更改や統合を考えると、データを取り出せるか、移行できるかは非常に重要です。
セキュリティと運用責任を明確にする
アクセス権限、監査ログ、バックアップ、障害時対応、職員退職時のアカウント管理まで確認します。
今すぐ確認したいチェックリスト
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 現在の電子カルテ | 標準仕様への対応予定、電子カルテ情報共有サービスへの対応予定、次回更改時の移行方針を確認する |
| 電子処方箋 | 接続予定、費用、運用変更の範囲、スタッフ教育の必要性を確認する |
| 情報共有サービス | 診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果などの連携方針を確認する |
| 標準API | HL7 FHIRなど標準APIへの対応予定、外部サービスとの連携方法を確認する |
| クラウド対応 | SaaS型、マルチテナント型への移行可能性、セキュリティ説明、障害時対応を確認する |
| データ移行 | 契約終了時のデータ出力、他社電子カルテへの移行可否、出力形式を確認する |
| セキュリティ | アクセス権限、監査ログ、バックアップ、医療情報システムの安全管理ガイドラインへの対応を確認する |
| 業務フロー | 受付、診療、会計、請求、患者連絡まで整理できているかを確認する |
| コスト | 初期費用、月額費用、オプション費用、制度対応時の追加費用を確認する |
| 更改時期 | 次回更新時に標準仕様対応を検討できるか、更改までに業務整理の時間があるか確認する |
F Labelに相談できること
標準型電子カルテへの対応は、電子カルテベンダーだけで完結する話ではありません。 実際の現場では、電子カルテ以外にも、予約システム、Web問診、オンライン診療、会計、レセコン、 患者連絡、ホームページ、LINE、データ管理など、複数の仕組みが関係します。
F Labelが支援できる領域
- 電子カルテ更改前の業務整理
- クラウド型電子カルテ導入前の要件整理
- 予約、問診、会計、患者連絡の連携設計
- 院内業務フローの見直し
- 補助金や制度対応を見据えたシステム構成の検討
- 既存システムからのデータ移行方針の整理
- 医療機関向けWebシステム、管理システムの開発
- 開業前のIT環境設計
電子カルテそのものを導入するだけでなく、周辺システムや業務全体をどう設計するかが、 これからの医療DXでは重要になります。
医療DX・電子カルテ更改の前に、業務設計から見直しませんか?
F Labelでは、医療機関のシステム導入、業務設計、クラウド活用、Web・IT連携、DX支援を通じて、 現場に合った実装をサポートしています。
F Labelへ相談するまとめ:標準型電子カルテは"次回更改"から考えるべき経営課題
標準型電子カルテは、2026年に入り、いよいよ具体的な仕様ベースで検討できる段階に入りました。 厚生労働省が標準仕様書1.0版を公表したことで、医療機関は「いつか対応する話」ではなく、 次回の電子カルテ更改や新規導入時に、どのように標準対応へ備えるかを考える局面に入っています。
今後の焦点
電子カルテ情報共有サービス、電子処方箋、HL7 FHIRなどの標準API、クラウド型電子カルテ、 データ移行性・互換性が重要になります。
医療機関が考えるべきこと
単なるシステム更新ではなく、診療インフラ、院内業務効率化、将来の制度変更への備えとして考える必要があります。
電子カルテの更新、クラウド移行、医療DX対応、院内システムの見直しを検討している医療機関は、 早い段階から「標準型電子カルテ時代」を見据えた準備を始めることが重要です。
引用・参考
-
厚生労働省「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/standardspec.html -
厚生労働省「医療DX令和ビジョン2030」厚生労働省推進チーム
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei_210261_00003.html -
厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkarukyouyuu.html -
厚生労働省「電子カルテの普及について」
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001657580.pdf -
厚生労働省「電子カルテ情報共有サービス|システムベンダ向け」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkaru_systemvendor.html
免責事項
本記事は、公開情報をもとにF Labelが一般的な情報提供を目的として作成したものです。 制度内容、仕様、補助制度、診療報酬上の要件等は今後変更される可能性があります。 実際の電子カルテ導入、システム更改、補助金活用、制度対応を行う際は、 厚生労働省、関係機関、電子カルテベンダー、専門家等の最新情報をご確認ください。